「返り読み」の習慣が脳の処理速度を奪う
英文を読んでいるとき、「あれ、この文の主語はどこだ?」「さっきの段落の意味は何だった?」と、何度も文頭や前の段落に戻って読み直す「返り読み」をしていませんか?
返り読みは、その都度、脳の処理を中断させ、効率を大きく低下させる習慣です。この原因は、英語の情報を**「一時的に保持し、処理する能力」、つまりワーキングメモリ(作業記憶)の限界にあります。 この記事では、あなたの脳の処理速度を劇的に上げ、スムーズに英語を理解するために不可欠な「多読」が、どのようにワーキングメモリを強化し、学習効率を向上させるかを解説します。
この記事では、脳の処理速度を上げ、スムーズに英語を理解するために不可欠な「多読」が、どのようにワーキングメモリを強化し、学習効率を向上させるかを解説します。
1. ワーキングメモリとは?英語学習における重要性
ワーキングメモリは、脳の前頭前野が中心となって司る機能で、「今、この瞬間に必要な情報を頭の中に保持し、処理する」作業台のような役割を担っています。
- 日本語を読む時: ワーキングメモリは文章の情報を保持しつつ、次の文章を処理し、全体をスムーズに理解できます。
- 英語を読む時: 慣れない文法や語彙に遭遇すると、ワーキングメモリの容量をすぐに使い果たし、情報が溢れてしまうため、結果として返り読みをしたり、文章全体を見失ったりしてしまいます。
多読は、このワーキングメモリの容量を、英語処理のために拡張し、情報を保持する処理速度を高めるための、最も効果的な訓練法です。
2. 多読がワーキングメモリを強化するメカニズム
多読(自分のレベルより少し易しい英文を大量に読むこと)は、脳に以下の二つの強力な変化をもたらします。
① 「語彙・文法の自動化」による容量の確保
効果:多読では、何度も同じ基本語彙や文法パターンに繰り返し出会います。前回の記事(記事15)で解説した「自動化」がリーディングでも起こり、単語や文法を意識的に解読する必要がなくなります。
結果: 自動化された情報処理はワーキングメモリの容量をほとんど消費しません。空いた容量を、「文章全体の意味を推測する」「筆者の意図を理解する」という、より高度な処理に使えるようになり、読解スピードが向上します。
② 「並列処理」の訓練
返り読みは、脳が情報を**「直列処理(一つずつ順番に)」**している状態です。
- 効果: 多読では、辞書を引かずに前へ前へと読み進めることを意識します。これにより、多少理解できない単語があっても、全体像を把握しながら先へ進むという、脳の**「並列処理」が促されます。
この並列処理の訓練を繰り返すことで、情報を保持する情報処理の「スピード」が上がり、結果として英文を「前から理解する」英語脳が構築されます。
3. 多読を習慣化し、脳の処理速度を上げる実践テクニック
多読の効果を最大限に引き出し、あなたの「こつこつ努力できる」強みを活かすためのコツです。
✅ ルール1:辞書は引かない(8割理解できればOK)
- 目的: ワーキングメモリの容量を、単語の意味検索ではなく、文脈理解に集中させるためです。
- 基準: 読んでいて、内容の8割以上が理解できるレベルの洋書や英文記事を選びましょう。わからない単語が出てきても、文脈から推測する訓練が脳の柔軟性を高めます。
✅ ルール2:量を「可視化」する
- 目的: 習慣化(記事9)を促すための**達成感(報酬)**を可視化するためです。
- 訓練法: 「今日は〇〇ページ読んだ」「累計〇〇語読んだ」といった**「量」を記録します。読む「スピード」ではなく、「今日は〇〇ページ読んだ」という達成感を脳に与え、報酬系(ドーパミン)を刺激して継続を容易にします。
✅ ルール3:声に出して読む(音読)を組み合わせる
- 目的: リーディングの視覚処理を、**聴覚処理(耳)と発話処理(口)**と連携させ、脳内ネットワークを強固にするためです。
- 訓練法: 読んだ英文の中から特に気に入った部分を、正しいスピードとリズムで音読(記事15)してみてください。音読は、英語を意味の塊で捉える訓練になり、理解を助けます。
まとめ:多読で「脳の作業台」を広げよう
- 返り読みの原因は、ワーキングメモリのオーバーフローにある。
- 多読による自動化が、脳の処理スペースに余裕を作る。
- 「辞書なし・大量・可視化」が脳を効率よく書き換えるコツ。
今日から実践できること:
- 自分のレベルに合った英文を5ページだけ選び、「辞書を引かずに、前へ進む」というルールで読んでみてください。
次回の記事では、英単語や文法を「暗記」するのではなく、脳が自然にルールを吸収するプロセス「インテイク」の仕組みを解説します。
