なぜ、単語を覚えてもすぐに忘れてしまうのか?英語学習の停滞期を脱出!

物忘れをしたために首を傾げる人を鉛筆書きした画用紙を撮影した写真

「昨日覚えたはずの単語を、もう思い出せない…」
「せっかくテキストを暗記したのに、1週間後には頭の中から消えている…」

この現象は、私たちの記憶力が悪いからではありません。原因は、私たちの脳が正常に働いていることにあります。

脳は、生存に関係のない「重要度の低い情報」を整理し、スペースを空けようとします。これが忘却です。 逆に言えば、この「忘れる」仕組みを逆手にとり、脳に「これは重要だ!捨ててはいけない!」と錯覚させることこそが、脳科学的な最強の記憶定着法なのです。

この記事では、脳の記憶の仕組みを逆手に取り、「忘却」を味方につけて英語を定着させる科学的な戦略を解説します。

目次

1. 記憶の番人「海馬」の役割を知る

私たちの記憶において最も重要な役割を担うのが、脳の奥深くに位置する海馬 (かいば) です。海馬は、インプットされた新しい情報を一時的に保管する「仮置き場」のようなものです。

  • 短期記憶(仮置き場):海馬が管理し、数日~数週間で消えてしまう。
  • 長期記憶(保存庫):海馬から大脳皮質に送られ、半永久的に保存される。

海馬が、情報を「長期記憶に送るか、捨てるか」を判断する最大の基準は、「その情報にどれだけ頻繁に出会ったか」です。海馬は、「何度も出会う=生存に必要な情報」だと判断するのです。


2. 最強の定着法:「分散学習」のサイクル

記憶を定着させるためには、一気に詰め込むのではなく、「忘れかけたタイミング」で再び刺激を与えることが重要です。これを脳科学では「分散学習」と呼びます。記憶術の古典であり、脳科学的にも裏付けられているのが、「エビングハウスの忘却曲線」です。 これは、「人間は一度覚えたことを急速に忘れていく」という事実を図にしたものですが、重要なのは、曲線が示す「忘却のスピード」ではありません。重要なのは、「復習のタイミング」です。最も効率的に記憶を長期記憶に送るには、完全に忘れる前に、少しだけ忘れてきたタイミングで復習をすることが重要です。

最も効率よく記憶を長期保存庫へ送るための、復習スケジュールの目安は以下の通りです。

復習の回数おすすめのタイミング
1回目学習した翌日
2回目1回目から3日後
3回目2回目から1週間後
4回目3回目から2週間後
5回目4回目から1ヶ月後

この分散学習のサイクルで学習すると、復習するたびに忘却のスピードが緩やかになり、やがて情報は強固な長期記憶として大脳皮質に定着します。「忘れる」ことを恐れず、忘れ始めるタイミングを狙って復習することこそが、海馬に「これは重要な情報です!」と強い信号を送る最善の方法なのです。

3. 海馬を「その気にさせる」2つのコツ

単に繰り返すだけでなく、より効率的に海馬を刺激し、記憶を長期定着させるための具体的なテクニックを二つご紹介します。

① エピソード記憶と結びつける

脳は単なる記号よりも、「感情」や「状況」がセットになった情報を優先的に保存します。単語を覚えるときは、自分がその言葉を使っている場面を想像したり、過去の失敗談と結びつけたりしてみましょう。海馬が得意とするのが、「いつ」「どこで」「誰と」「どんな感情で」経験したかという「エピソード記憶」です。 単語を無機質に覚える代わりに、その単語を使った短い会話文や、自分がその単語を使った失敗エピソードとセットで記憶してみてください。感情や状況(エピソード)と結びついた記憶は、海馬が「重要な経験だ」と判断し、定着率が飛躍的に向上します。

例: hesitate(ためらう)を覚える際、「カフェで注文する時、つい I hesitate to order と言えずに固まってしまった」というエピソードとセットで覚える。

② テスト効果(アウトプット)の活用

単語帳を眺めるだけの「インプット」よりも、隠して思い出そうとする「テスト」の方が、脳への刺激は数倍強力です。「思い出す努力」こそが、海馬に重要性を分からせる一番の近道です。単語帳をひたすら「見る・読む」だけのインプット中心の学習は効率が悪いです。脳科学的に最も記憶を強化するのは「アウトプット」です。

これは「テスト効果」と呼ばれ、思い出す努力(検索練習)そのものが、記憶の定着を強固にすることがわかっています。

実行法: 単語を覚えたら、すぐに隠して「思い出せるか」を試す。声に出して使う、短い文章を書いてみるなど、脳に負荷をかけて思い出す練習を繰り返しましょう。


まとめ:今日から実践できること

  • 「忘れる」ことを自分に許す: 忘れるのは脳が整理整頓している証拠です。自分を責める必要はありません。
  • 復習の予約を入れる: 海馬に「重要だ」と認識させるため、分散学習の黄金律(翌日、3日後、1週間後…)で復習スケジュールを組みましょう
  • 記憶はエピソードとアウトプット(テスト)で強固になります。単語を覚える際は、状況と感情をセットにし、すぐに思い出す練習をしてください。復習の際は、必ず自分でテストをしてみてください。

次回の記事では、大人学習者が最も勇気づけられるテーマ、「脳の可塑性」について深掘りします。何歳からでも脳は進化できる理由をお伝えします!

次の記事へ:
[記事4] 臨界期は本当に存在する?大人でもネイティブ並みになれる脳の可塑性

この記事を書いた人

目次